【山岳遭難の教訓】3日間の遭難で約40回幻覚を見た久保さん(69歳)がすごい

Kindle unlimitedで羽根田治さんの山岳系の本を読むのが好きなのですが、また面白い本を見つけてしまいました。

「山岳遭難の教訓」という本です。

山岳遭難は雪崩、低体温症、道迷いと様々なケースがあります。その中で久保博臣さん(69歳)が体験した「幻覚」についての事例がとても興味深かったので感想を書きたいと思います。

久保さんは奈良県にある修験道の奥駈コースへ登山へ向かうのですが、途中で遭難してしまい初めて幻覚を体験します。

本書では幻覚と思われる箇所は太字になっています。だんだんと太字だらけになっていく様はまるでスリラー小説のようで、読んでいて戦慄します。

太字部分を数えてみると、久保さんは遭難している間に約40回幻覚を体験していたことになります。

久保さんの幻覚の件は過去にSNSで拡散されていました。

どのような経緯で幻覚を見たのか、幻覚はどのようなものだったのか紹介していきます。

動画で見たい方はこちら↓

当記事では諸事情で幻覚の部分をいくつかカットしているので、動画の方がオススメです。

3日間の遭難で、約40回もの幻覚に襲われた久保さんの例

久保さんは60歳代最後の記念登山として、2011年8月に修験道の奥駈コースに出掛けました。

登山開始から2日目の夕方、土手のようなところから7メートルほど滑り落ち、怪我をしてしまいます。

滑落時に帽子とストックをなくし、更に渓流を渡っている最中にメガネが流されてしまいました。

あたりはすっかり暗くなっていて、不安と緊張の中、岩陰で野宿をします。

いつも家内から小言を言われているので、「これからは自分勝手なことをしないでよく考えて行動しよう、晩酌は週に3回のビールだけにしよう」と決心した矢先、久保さんは初めて幻覚を体験しました。

足がだるいので足台があればと思ったらさっと出てきた。ところが足を乗せるとすとんと足が落ちた。次に「肘がだるい。肘台がほしい」と思ったら、また出てきた。肘を乗せようとしたら、体がぐらっと傾いた。 

山岳遭難の教訓 -実例に学ぶ生還の条件

久保さんは激しい幻覚に襲われますが、「このまま死んでしまったら、世間から自殺したと思われかねない。絶対に死ぬわけにはいかない」と奥歯を噛み、休みながら斜面を下ります。

更に久保さんは幻覚を見続けます。

突然、すぐ近くで男の声がして(姿は見えない)、「この上に宿坊があるから泊まればいい」と言う。坂を上がっていくと、そこは回廊になっていて、さらにその上に何軒かの宿坊が灯火をつけて回廊を取り巻いていた。そばにいる人に聞いてみると、そこは「信者でないと泊めない」と言う。「それは伝教大師最澄の教えか」と尋ねたら、「最澄の教えではないが、そのように運用している」とのこと。私は「最澄の教えではないなら」と、いちおう納得しあきらめた。回廊の真ん中にはスギの木立があり、仕方なくそこで野宿したー

山岳遭難の教訓 -実例に学ぶ生還の条件

深夜、男の声で「靴を脱いだら」「スパッツを外したら」と言われ、そのとおりにする。すると今度は「腕時計を2つしているなあ」と言われたので、時計はひとつしかないのに、おかしなことを言うなあと思いつつ手首に触ってみると、たしかに2つある。「ひとつ外したらと」言われ、外して足元に置く。

山岳遭難の教訓 -実例に学ぶ生還の条件

怒涛の幻覚ラッシュです。下画像は本書のスクショです。文章は太字だらけ・・・

翌朝、久保さんは立った状態で朝を迎えました。まだまだ遭難は続きます。

遭難3日目〜救助まで

斜面を下っていると、急に上空で大きい音がしました。ヘリコプターが飛来して「奈良県北葛城郡の久保博臣さんを捜索している」と拡声器で呼び掛けています。

久保さんは捜索隊員に発見してもらいやすいように移動するのですが、また幻覚に襲われました。

5、6人の男たちがこちらに向かってくる。車で前鬼に遊びにきたような服装をしている。

「全身打撲で動けません。水をいただけませんか」と叫ぶが、男たちはなかなか近づいてこない。そのうちに陽炎のようにゆらゆらしてきて、男たちの姿は見えなくなった。

山岳遭難の教訓 -実例に学ぶ生還の条件

幻覚や蚊に悩まされ、沢の水だけを飲み、小便や下痢を漏らしながらも孫に会いたい一心で久保さんは山を下り、救助されました。

最後に身につけていたのはTシャツ、ズボン、ステテコ、靴下のみでした。

次から次へと現れた幻覚と久保さんのその後について

遭難初日に初めて見た幻覚は「今のは幻覚だったんだな」という自覚があったようですが、翌日以降は「幻覚を見ているとは感じない。場面が次々と変わるだけ。疑うことなくすべてをありのままに受け入れていた」と言います。

「夢はすぐ忘れるが、幻覚はいつまでもはっきりと覚えている。正気・覚醒の状態で見聞きしたのと同じ。後日、幻覚かどうか合理的に判断するしかない」

山岳遭難の教訓 -実例に学ぶ生還の条件

不思議なのは、幻覚を見たのはがむしゃらに歩き続けた最初の2日間だけで、行動をやめて一カ所に留まっていた日以降はぱったりと幻覚を見なくなったことです。

不安や焦燥にかられているときは幻覚を見やすく、気持ちが落ち着いてくると見にくくなる傾向があるのかもしれません。

久保さんは発見時には脱水症・低体温症を起こしており、1週間ほど入院しました。

足の指は全部切断することになるかもしれない、と言われましたが、結局は落とさずにすみます。手術と入退院を繰り返し、10月13日にようやく退院することができました。

まとめ

「山岳遭難の教訓」の中から、まるでスリラー小説のような幻覚に襲われた久保さんの事例を紹介しました。

幻覚と思われる部分は太字で記載されており、遭難した3日間のうちに40回以上久保さんは幻覚を体験しました。

久保さんが助かったのは遭難初日に家族が遭難願いを出していたこともありますが、「救助されたのは幸運以外のなにものでもない」と著者は述べています。

遭難中に体験した幻覚について、興味を持った方はこちらの記事もオススメです。

登山で遭難した人達が見た幻覚まとめ

記事は以上になります。

maedayuka

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