【マタギ奇談】を読んだ感想 八甲田山・雪中行軍について
マタギ奇談とは
著者が長年、マタギにインタビューして奇談を集めた本です。
マタギの文化や習わし、そして今までに起こったマタギに関する事件を詳しく知ることができます。
マタギについて「えっ?」と思うような風習や儀式、戦後にあったちょっと怖い話、それとは逆に心温まるエピソード、そしてマタギを通して自然保護とは何をもってして言うのかと考えさせられる非常に濃い本となっています。
本記事ではマタギについてのちょっと変わった文化、そして読者から感想が多かったエピソードについて触れます。
特に「マタギが八甲田山・雪中行軍に関係していた」というお話は、非常に多くの感想が寄せられています。それでは書いていきます。
動画で見たい方はこちら。
結構えげつないマタギの基礎知識
本書に掲載されている、マタギについてなかなか衝撃的な知識・風習についてご紹介します。
- マタギはかの有名な八甲田山・雪中行軍にガイドとして参加していた
- 4、9、12の数字を避ける(忌み数)
- 【サゲフリ】山の神様に男根を見せる儀式がある
- マタギは漢字で書くと「又鬼」
- マタギは他の集落より裕福なので金歯をした人が多い
マタギはかの有名な八甲田山・雪中行軍にガイドとして参加していた
1902年に、日本陸軍第8師団の歩兵第5連隊が青森県・八甲田山に入り、参加者210名のうち、199名が凍死するという事件がありました。
この事件は小説や映画にもなり有名ですが、行軍にマタギが案内人として雇われていたことはほとんど知られていません。
4、9、12の数字を避ける(忌み数)
マタギは基本的に、4と9と12の数字を避けます。例えば、5つキノコがあれば、4つではなく3つ採り、12人で山へ入る時は、人形を作って13人にします。
【サゲフリ】山の神様に男根を見せる儀式がある
山の神様は男根が好きと言われています。マタギは「サゲフリ」という儀式をして、定期的に山の神様に感謝を捧げます。
①猟に参加したマタギ達が、小屋の中で焚き火を囲む。
②一番年の若い男が裸にされ、股を広げて立たされる。
③他の男が若い男の男根を揉んで勃起させる。
④更に男根に木の燃えさしを麻紐で結んでぶら下げ左右に振らせ、山の神様に見せる。
男根が好きという山の神様へのお礼だそうです。
マタギ奇談の動画や記事を書くきっかけとなったのがこの儀式です。すごいですよね・・・。
マタギは他の集落より裕福なので金歯をした人が多い
1945年、青森県西部にある大然というマタギの集落が、山津波に遭い全滅しました。
荼毘に付された遺体の口は、不自然にこじ開けられ歪んでいました。マタギの遺体の口を無理やり開けて、金歯を奪っていった人がいるのです。
大然は農業以外にマタギをしていたため裕福で、金歯を入れていた人が多かったそうです。
マタギが八甲田山・雪中行軍にガイドとして参加していた話について
読者から感想が特に多かったのは、八甲田山・雪中行軍にガイドとして参加していた話、青森県西部にあるマタギの集落が山津波に遭って壊滅した話、本書最後に掲載されているエピソード「老マタギと犬」の3つです。
八甲田山のお話だけ少し紹介します。
1902年、日本陸軍第8師団の歩兵第5連隊が青森県・八甲田山に入り、参加者210名のうち199名が凍死しました。
マタギをガイドとして雇ったのは、福島大尉率いる弘前隊という部隊です。
弘前隊は村役場に案内人を頼みます。その中に沢内鉄太郎というマタギがいました。
鉄太郎ら案内人は天候を見て、「こんな時に八甲田に入るのは危険です、中止すべきです」と進言しましたが、大尉はその忠告を聞きませんでした。
福島大尉は鉄太郎達に過酷な労働を強い、辛く当たりました。自分が休憩を取っている間、鉄太郎達には休憩させず、ろくに食事も摂らせませんでした。
重い銃を担がせたり、弁当と鉄太郎の仲間を人質にとって人探しをさせました。
そして多くの凍死者を出す中で、「ここで見たことは他言するべからず、言えば軍隊の牢獄にいれる」と脅し、口止め料を払って鉄太郎達を無理矢理帰しました。
鉄太郎達は命だけは助かりましたが、凍傷で手や指の足を落としてしまいました。
遭難で死んだ兵士達には国から弔慰金が出ましたが、鉄太郎達には何の補償もありません。
鉄太郎達は当然おこりましたが、軍の牢獄に入れられることを恐れ、事件のことは誰も口に出しませんでした。
その後、案内人のひとりが死亡。数年後に鉄太郎も死にました。
遭難事件から28年後の1930年、生き残った案内人のひとりが初めて遭難事件を語り、たちまち話題になりました。
「小笠原狐酒」という人物がこの事件について本を書き上げ、自費出版します。
それを読んだ著名な小説家、新田次郎が「八甲田山・死の彷徨」を出版しベストセラーに、更に映画「八甲田山」が公開され、邦画配給収入第一位を記録しました。
しかし、新田次郎の小説にも、映画八甲田山にも、鉄太郎達がひどい扱いを受けたことは一切描かれませんでした。
そればかりか、ところどころ史実が曲げて作られ脚色されていたのです。
小笠原狐酒は出版を続けようとしますが、本は売れず、世間から忘れ去られ、1989年に亡くなりました。
事実を追及した書物は歴史に埋もれ、面白おかしく脚色された小説・映画の方が多くの人に受け入れられたのはなんとも皮肉な話だと、著者は語っています。
他2つのお話は動画の方で。
個人的に印象に残ったお話
ちょっと怖い・不思議なお話が多いですが、心温まるお話も掲載されております。
ひょんなことから2匹のクマを育てることになったお話が大好きです。
あるマタギが母グマを誤って殺してしまい、2匹の子供のクマを引き取って育てます。
ある程度育ってきたので山に返すのですが、すっかりマタギを親と思い込み帰ってきてしまいます。
それが何度も続いたため、専用の檻を作って2匹のクマを飼うことにした・・・というお話です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「マタギ奇談」に掲載されているお話をいくつか紹介しました。
印象が強かったと言われているのは八甲田山・雪中行軍にガイドとして参加していた話、山津波の話、本書最後に掲載されているエピソード「老マタギと犬」の3つです。
その他、忌み数やサゲフリなど独特なマタギの文化を知ることができます。
ちょっと怖い話もありますが、マタギを通して人間と自然の在り方について考えさせられるおすすめの本です。
kindle unlimitedで読めます。
(情報は2020年11月時点のものです。最新の配信状況は kindle unlimited サイトにてご確認ください。)